藤子・F・不二雄さんと言えば、『ドラえもん』が有名です。
あの作品は、子どもに夢を与えたり、
大人には「間」の面白さで大爆笑させたりと。
老若男女が楽しめる素晴らしい漫画です。
そんな藤子・F・不二雄さん。
『ドラえもん』以外にも多くの作品を世に出しています。
短編モノの漫画などは、
もうかなり秀逸で何度読んでも飽きないのですが。
今日は『懐古の客』という作品を取り上げてみます。
「グッドオールドデイズ1週間」というパック旅行で、
未来から訪れた観光客。
オンボロのアパートの見た目に大喜びする彼。
本物の畳の上に立って大喜びする彼。
合成ではない、本物の肉や野菜に感動する彼。
夜は、布団で眠れることに感動し。
白熱電球に感動し。
蚊が飛んでいることに感動し。
そして翌日、ぶっ倒れます。
医者の診断は、
「食中毒、虫さされ、おたふく、風邪の合併症で、
極端に症状が重い状態」。
「雑菌等に対する抵抗力が皆無」なんだそうです。
これ、私の中で「うーん」と思うところがありました。
今の時代の延長には、まず間違いなく「そういう時代」が
来ると思っていたから。
汚いものを徹底的に排除する風潮。
食肉だって知らないところで加工されて、
子どもたちの前にはパックされた「食材としての肉」があるだけ。
手を洗ったあと、洗浄力の強い石鹸を使っているにも拘わらず、
そのあとはアルコール消毒。
テーブルを拭くにも、水拭きだけではなく、
洗剤やアルコールスプレー。
水は濾過されたものを、更に家庭で浄水したり、
山から取水した水を取り寄せたり。
(これに関しては、今はセンシティブな問題を
孕んでいるわけですが)
ちょっと風邪を引いたら、すぐに病院に行って薬をもらったり。
人間自らの持つ浄化力や治癒力、免疫などを
衰えさせている流れに感じるときがあります。
これ、目に見える事柄だけではなくて、
「目に見えない」心の部分にまでも及んでいます。
例えば、童話。
子どもに聞かせる「おはなし」がどんどん「綺麗」になっている。
さるかに合戦って、昔は猿が死んじゃってましたよね?
今は、死にません。
その後、仲直りするか、
若しくは遠くへ逃げていったことになっていることが多いです。
ラプンツェル。
オリジナルのグリム童話では、
王子がかなりひどい目にあっていますが、
ディズニーに映画化された際にそういう部分はなくなりました。
(でも、このディズニー映画は名作だったと思ってます。
しょこたんの力を使わなくても、十分にPRできたはず。)
その他、子どもに聞かせる物語がどんどん
「まろやか」になっているように感じます。
でも、本当は。
物語として「ちょっと怖いもの」だったり、
「ちょっと残酷なもの」だったり。
そういうものを聞かせることで、
子どもは道徳心や感受性などを育んでいくのではないかなあ、
と思います。
「自分の範疇でないもの」を感じさせることによって、
「自分の輪郭」を感じ取る作業ができるわけですし。
その「範疇でないもの」に対する耐性を予めつけさせておくことで、
そういったものを目の当たりにした際。
極端な反応をせず、適切に対処できるようになっていく。
強い子どもを育むって、そういう要素の積み重ねだろうなあ、
と感じています。
冒頭の『懐古の客』。
重い症状で入院し、何とか一命を取り留めたものの。
添乗員との集合に間に合わず、未来に帰れなくなってしまいます。
「帰るあてもなく金もなく」
「私はこれからどうやって生きていけばいいのだろうか・・・・・」
この台詞で物語は終わりです。
本当に、秀逸な展開です。
さ、今日も素敵な1日をお過ごしください!
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