「どうして君は、この曲を弾いているの?」
大学1年生の時、
初めて外国の先生にレッスンを受けた際に聞かれたことです。
初めての外国の方のレッスン、私は何を聞かれてもいいように、
曲の分析をしっかりやっていったし、
歴史的背景も出来る限り調べていったし、
自分の考えなんて、いくらでも述べられると思っていたのに、
その時にだけ言葉を詰まらせてしまいました。
「理由がないのに弾いているのかい?」
先生は、まるで信じられないといった表情で
更に問いかけてきました。
そして
「日本人はいつもこの質問に答えられない」
とも言っていました。
鉄製のバッドかなにかで思いっきり頭を殴られたような、
そんな感覚だったのをよく覚えています。
「先生から出された課題だからです」なんて、
浅はかな答えは口が裂けても言えませんでした。
その時、私は初めて自分の音楽に対する認識に疑問を持ちました。
伝えたいことも、表現したいことも、いくらでもあるのに、
「何故、そのことを伝えるためにこの曲を選んだのか」
という一番最初にあるべき考えにたどり着けていない自分が
恥ずかしくてならなかったんです。
ただ綺麗だから、この作曲家が好きだから、
そのよさを分かってもらいたいな。
という、とても安易な感覚で音楽の世界に身を置いていました。
そして、思えば、今までついていた先生に
そんな質問されたことは一度だってなかったな、とも思いました。
「どうして?」「なんで?」・・・言われてみたらどうしてだろう?
という根本的な疑問なのに、何故、日本では聞かれる事がないんだろう。
先生たち自身は、私たちに何を伝えるために
教えてくれているんだろう。
私の元々の音楽的センスの問題もあるだろうけど、
教育の仕方にも問題があるのかもしれない。
何かが欠けている気がする。そう思いました。
この事をきっかけに私は日本とヨーロッパ諸国の
音楽教育の違いに興味を持ち始めました。
具体的に何が違うと感じたか、
それは次の記事でお話しますね。
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