ホテル:海のみえる部屋

今月は「コミュニケーション」にスポットを当てて、
お送りしてきましたが、いよいよクライマックスにさしかかります。
前回までのコラムで、「コミュニケーション」のレベルは
「ホスピタリティ」に応じて変化するという立場で、
以下の様に分類して参りました。

LEVEL1 : 情報伝達の手段
LEVEL2 : 相互理解の手段

そして、相互理解が前提であれば、
少なくとも相手がどの立場でコミュニケーションを取っているかを
確認しなければコミュニケーションは成立しえない点も
触れた通りです。
今回は、そこから更に「ホスピタリティ」のレベルを上げたら
どうなるのか。
コミュニケーションの神髄とも言える化学反応について
例を交えてお話ししたいと思います。

上司「明日は○○社で会議があるんだ。作成方法など、
全てメールしておいたから、必要な資料を揃えてくれ」
部下「なるほど。早急に用意します」

—会議当日—

上司「資料、よくできていた。ありがとう。ところで…これは?」
部下「はい。○○社の××部長は先週お伺いした際に、
来月お子様のお誕生日があり、仕事でお忙しいこともあり、
お子様がプレゼントで何をもらったら嬉しいか、お悩みの様でした。
丁度、私の甥が部長のお子様と同年代なので、
彼らの年代で流行しているものを聞いて
写真付きでリストアップしておいたものです。
出過ぎたものであれば、課長(上司)のご判断でお控え下さい」
上司「いや、素晴らしい仕事だ。
考えうる最善のタイミングで渡しておくよ。
当然、君のこともよろしく伝えておく」

いかがでしたでしょうか。
せっかくなので、他の例も挙げてみたいと思います。

(某有名ホテルの逸話)

宿泊客「結婚記念日を海の見える部屋で
一室予約をしたいのですが・・・。」
フロント「ご連絡本当にありがとうございます。
大変申し上げにくいのですが、
生憎、当ホテルでは該当する日は満室になってしまっております。
大変申し訳ございません」
宿泊客「そうでしたか。それでは仕方無いです。
ありがとうございました」

—数分後—

フロント「○○ホテルの××です。
先ほどご予約のお電話を承ったものですが・・・」
宿泊客「おお。もしや、どなたかキャンセルが入られましたか」
フロント「いえ。残念ながらお客様のご宿泊状況に
変化はございません。
しかし、お客様のご要望にお応えできるホテルを近
隣で探したところ、お部屋が一室とれそうなので、
ご連絡いたしました。
よろしければ予約のご連絡も私どもが
お手伝いできますがいかがでしょうか」
宿泊客「!!」

素晴らしいお話です。
このお話を知った時、「ホスピタリティ」に感銘を受けると共に、
「コミュニケーション」の無限の可能性に出会った気がしました。

では、以上の2つの例は、
前回までの「コミュニケーション」と何が違うのでしょうか。
それは、「コミュニケーション」で言葉としての相互理解を
するだけでなく、行為の目的まで考えて行動している点です。
そして、行為の目的まで理解しているからこそ、
相手の想像を越えた新しい提案をしている点に尽きるでしょう。

1つ目の例で言えば、上司の目的は「会議に行く事」ではなく
「会議を成功させること」を部下が理解していることになりますし、
2つ目の例で言えば、フロントは「奥様を喜ばせること」
という目的を理解した上で新たな手段を提案しているのです。
当然ながら「コミュニケーション」を行うには
二人以上の人が必要となります。
自分の考えをまとめるだけならば、自問自答で済んでしまいます。
では、なぜ相手に理解して欲しいのか?
ここに踏み込めば答えは見えてきそうですね。

そう。
「コミュニケーション」は「相互理解」を図った上で
「一人ではみえないモノ」を発見し
新たな解決策を導きだす手段だったんですね。

今までのお話をレベル別でまとめると以下の様になります。

LEVEL1 : 情報伝達の手段
LEVEL2 : 相互理解の手段
LEVEL3 : 相互理解の上で新たな発見(提案)をする手段

さて、僕は何故この場を借りてこのお話をさせていただいたか。

何度も言いますが「学問」とは様々な可能性を導きだす作業です。
日々、今ある知識や状況に目を向け様々な可能性に
思いを馳せていくこの作業は「コミュニケーション」の際にも
力を発揮するはずです。
逆に言えば、「コミュニケーション」の中で
相手や会話の内容に興味を持って、思惑を巡らせていけば、
それは既に広義の「学問」を行っていると言えると思ったからです。

もちろん、思考した結果、行動に移さなくては相手に伝わりません。
先に挙げた例の様に「思考を具現化する力」についても
いずれ触れていきたいと思います。
長くなってしまいましたが、
読んで下さりありがとうございました。

せっかくコミュニケーションについて触れたので、
次回は「相互理解」の観点から

「国語という科目の重要性」

をお送りしたいと思います。

それでは今日も良い1日を!

 

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