読書する赤ちゃん

道徳心を育む上で、
幼少期の読書体験というのは大変重要だと思います。

私の本に関する古い記憶は幼稚園の時の『野口英世』。
父親が兄に読んであげているのを
脇で聞いていたという状況でしたが、大変感銘を受け、
以降、「努力」が私の座右の銘の1つになりました。

小学生の頃、晴れた日は外で思い切り遊び、
雨の日は室内で本を読んだものです。
まさに「晴耕雨読」。

特に、SF、シャーロックホームズを中心に貪るように読みました。
ただ、当時の小学生が特に真面目だったわけではないと思います。
たまたまテレビゲームなどという
大変面白い物が無かったおかげです(笑)。
おもちゃに変わって本が面白い「娯楽」だったということでしょう。
ちなみに、私の両親は、本はたくさん買ってくれましたが、
おもちゃ類はあまり買い与えませんでしたから、
一層、本が面白く思えたのです。

ですから、将来役に立つからという打算ではなく、
本当に「面白くて」たまらないから本を読んでいたのです。
母の「ご飯だよ」とか「遅いから寝なさい」
という言葉を聞く度に「あ~、いいところなのに」
という状況でした。
まさに「寝食を忘れて」読書に勤しんだのです。

そのような読書経験を通じて、
「情緒」というものが育まれたと思います。
『ホームズ』を読み、事件の展開にワクワクドキドキし、
明快な推理に感動しました。
『チョコレート戦争』(*1)で子ども達が大人に
挑戦しようとする勇気に涙がこぼれました。
『孤島ひとりぼっち』(*2)では、
自分が本当に冒険やサバイバルを
している気分になったものです。
伝記も随分読みました。
偉人の失敗談から学び、成功までの道程に勇気をもらいました。

そのような膨大な読書体験を通じて、
子ども時代に様々な人生を「疑似体験」したのだと思います。

そしてその中で、カッコイイ生き方・誇り高き生き方、
醜い生き方・後悔する生き方などを「道徳」と意識することなく、
人の生き方を自分の内面に繰り込んでいったように思います。

(*1)
大石真著・理論社(1965年)。
洋菓子店のショーウィンドーを割ったという冤罪に問われた
子ども達が独善的な大人達と戦い勝利する物語。
今読んでも涙がこぼれます。

(*2)
矢野徹著・国土社(1969年)。
夏休みに海外旅行に出かけ、嵐に遭遇し、
無人島に取り残された順が脱出を試みる物語。

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