先生の授業、つまらないよー!

「自然に耳から入る情報」というものがなく、
獲得する情報が限定されている聾学校の生徒達は
「無垢」であるといえるでしょう。

無垢であるために、彼らは大変素直であり、
その様子は愚直でさえあります。
それは「幼い」とも言えるかも知れません。

実習が進み、段々打ち解けていくに従い、
通学途中に私たちを見つけると、
満面の笑みで近づいてきて、
手を引っ張って一緒に行こうとします。
何ともほほえましい光景ではありますが、
中学生くらいになるとあまり見られない光景ですよね。
このような、小学生のような面もあるのです。

ただ、無垢であるということは同時に
「大人のような配慮をしない」
「空気を読まない」
ということでもありました。

教育実習の経験のない方は驚くかも知れませんが、
頻繁に実習生が訪れる付属中学校の生徒などは
「実習慣れ」をしていて、「大学生を評価」したりします。
評論家のように
「今回の実習生はちょっと元気が足りないね・・・。」
などとしたり顔で論評したりするのです。

私も感想文に
「先生の授業は大体よくできていたと思いますよ。
がんばってよい先生になってください。」
などと書かれました(笑)。

しかしその一方で、生徒達は、実習生の拙い授業に対して
「まあ、実習生のことだから大目に見よう」
「しかたないなあ、聞いたふりをして別のことをやっていよう」
などという対応をしたりするものでした。

ところが聾学校の生徒達はある意味で「素直」ですから、
このような対応はしません。
分からない時は「分からない」、
つまらない時は「つまらない」という感想を
ストレートに表現します。

聾学校のプロの先生の授業でさえも、
「分からない」時に、授業放棄し、
立ち上がって教室を歩き回り、
黒板消しで先生の後頭部を叩いた生徒がいました。
他の実習生の授業では、
教室から脱走した生徒もいました。

そういう光景に遭遇し、段々自分の授業が近づくに連れ、
「自分は大丈夫だろうか・・・。」
という不安が強まっていきました。

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