野原をかける子ども

精神的に追い詰められた後の授業は
「産業革命」についての授業でした。
「国」や「貿易」(*)の概念も
イメージできない生徒達に
「産業革命」をどうやって教えるのだ?
迷っている時間はあまりありません。
次々と授業の計画を立てねばならない状況だったので、
ない知恵を絞り出すしかありません。

そこで、思いついたのは
「別の物に例えてみる」ということでした。
産業革命とは
「機械の導入よって産業や社会に
劇的な変化がおこったこと」ですが、
そのうち「機械の導入による劇的変化」
を疑似体験させるため「電動鉛筆削り(シャープナー)」
と「手作業(ナイフ)」による鉛筆削り競争を
させようと考えました。
「機械を使うと、同じ作業が
こんなに速く、きれいにできる」
ということを実感させ、産業革命の説明につなげようとしたのです。

しかし、結果は惨憺たるものでした。
「例え」の意図は伝わらず、
男子生徒の遊び心に火をつけた結果、
「お遊びの時間」となってしまい、混乱し、
収拾不能状態の中で授業が終わりました。

「意外な物」からスタートして、何かを学び、
「なるほどそういうことだったのか」
という「発見や学びの喜び」を伝えようとした
私の目論みはことごとく外れ、
失敗の連続の中で、
残すは最後の研究授業だけになってしまいました。

プロの先生方の見ている前で、
一体どういう授業をすれば良いのだ・・・。

当時の実習日誌には
「とにかく研究授業の準備を頑張って、
落ち込むのはその後にしようと思います。」
と書いてあります・・・。
落ち込んでいる時間さえ無い状況だったのです(笑)。

さて、どうする、どうする。
2日間、悩んで出した結論は、
「残された感覚を最大限に活用する」
ということでした。
生徒達は聴覚にハンディキャップがあり、
言葉の数も足りません。
ならば、視覚・触覚・味覚・嗅覚を
最大限に刺激して何かを伝えることはできないか・・・。

そこで、最後に開き直り、冒険的授業を構想したのです。
内容は「フランスの農業」です。
さて、結果はいかに・・・。

(*)
「貿易とは何ですか?」と聞いて来たY子さんについて、
指導教諭は「『国』の概念も分かっているか怪しい」
とコメントして下さいました。

9つの誤解:間違いだらけの“子育て”