20140123_edited

ある女性教諭が
「あのようなことをして恐くありませんでしたか?」
と質問してきました。
私は「「恐い」とはどういう意味ですか?」と問い返しました。
すると「単位を落としたら困るでしょう?」と言ってきたのです。

その言葉に私は、ハッとしました。
なるほど、教育実習は単位取得に必要な課程で、
単位が取れなければ卒業できません。
教師になることを断念していた私とて、
卒業のために必要だからこの聾学校に来たのでした。

しかし、いつの間にかそんなことは忘れて、
目の前の生徒と格闘する中で「単位が取れるとか取れない」
などと全く考えなくなっていたのです。
ある意味、その教諭の質問で現実に引き戻されたという感覚でした。

しかし、若さと教頭への怒りのせいでしょうか、
次の瞬間には「単位のために実習しているわけではありません!」
などと意気がった返答をしていました。
今思うと「いや、単位取得のためであるし、
そもそも2週間で教育に関する問題が
全て解決する訳ではないので、
そんなにのめり込んでもしょうがありませんよ」
と昔の自分にツッコミを入れたくなりますが、当時の私はその後、
その教諭に経緯を説明し
「自分なりに考えがあってやったのだ!」
と熱く語ったように記憶しています。
もしかしたら教頭にぶつけるべき怒りを
その教諭にぶつけていたかも知れません。
その教諭も「とばっちり」ですよね。

恐らく、心のどこかに「そんな下らないことでは無く、
授業の内容について質問をして下さいよ。
そもそもあなたたちは給料のためにだけ
教師という仕事をしているのですか?
もっと真剣に教育に関わるべきじゃあないですか?」
という気持ちを抱きながら語っていたように思います。

今ならば「社会人にだって、それぞれの生活があるし、
教師だからといって、日々教育のことばかり考えている訳には
いかない」という現実は当然理解できますが、
そんなことなど分からない、否、
分かりたくない若い頃の生意気な私がそこにいました。

9つの誤解:間違いだらけの“子育て”