前回は、情報源の多様化の必要性を
「それぞれの立場毎の正しさがある」という観点から書きました。
今回はさらに、「世論を特定の方に誘導するような
情報操作がなされることがある」という観点で
考えてみたいと思います。
あまり多くは報道されませんでしたが、
小泉内閣の時に郵政民営化などの構造改革を推し進めるため
「B層戦略」という手法が採られました。
広告会社「スリード」に依頼して国民の支持を獲得するための
手法を分析させ、それを選挙の時に採用したのです。
まず、国民を4つの層に分けます。
A層=「IQが高く構造改革に肯定的。
大企業トップの勝ち組やマスコミ」
B層=「IQが低く構造改革に中立か肯定的。主婦・子ども・老人層」
C層=「IQが高く構造改革に反対」
D層=「IQが低く構造改革に反対。失業者など」
分析の結果、特にB層に対するPRが強化されました。
PR方法としては、「物事を単純化し、AかBかという二者択一で語る」
「短いフレーズを反復する」「論理よりも雰囲気・感情・
イメージに訴える」というテレビ的手法が駆使されました。
B層はテレビなどの少ない情報源に依存しており
「テレビ的手法で簡単に誘導できる層」
と判断されたのだと考えられます。
その後、この手法は「国民を愚弄している」
と国会でも指摘されましたが、
国民的議論にならずに終わってしまいました。
その後の政治の在り方を見ていると
同様の手法が採られているのでは無いかと感じてしまいます。
個人的には政治的な課題が論理では無く、
雰囲気・イメージなどで捉えられて、
それに基づき決定がなされることは大問題だと思います。
しかし、テレビ局や政治家にしてみれば、
国民一人一人が自ら論理的に思考することより
「自社の番組を視聴すること」「自分に投票すること」の方が
重要事なのでしょう。
このような現実を十分に自覚した上で、
「情報を多様化する」「異論を比較して自ら論理的に考える」
ことなどが学びの上で大切だと考えます。
*参考
和田秀樹『テレビに破壊される脳』徳間書店(2012年)
適菜収『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』(2011年)
適菜収『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』(2012年)
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