脳の「代謝」

生物学者である福岡伸一氏は、生体を構成している分子が高速で分解され、
摂取した分子と置き換わる状態を「動的平衡」という言葉で表現しました。
つまり「更新」されつつ、それでいて「一定の状態」を保つ「流れ」のような
生命の在り方です。

例えば「ゆく河の流れ」は上流から流れてくる水にどんどん置き換わって
「更新」されていきます。
まさに「もとの水にあらず」です。
しかし、川の一点を眺めれば「同じせせらぎ」のように見えますよね。
これも「動的平衡」状態でしょう。

さらにこの「動的平衡」を「知」という観点で考えてみたら
どういうことになるでしょうか。
いわば「知の動的平衡」です。

個人の頭の中の「知の体系」は
学習によって取り込まれた情報に置き換わっていくことがあります。
学習を継続して新しいものを摂取する人は情報が次々と「更新」
されていきますが、「同じ人間としてのアイデンティティ」は保っています。
勿論、「成長」という意味で変化しているとすれば
「もとの自分にあらず」ですが。

そして、生体が必要な栄養を取り続け、古くなった分子を分解し、
新たに摂取した分子に置き換え、
「更新」することで「健康」な状態を維持しようとするなら、
「知の動的平衡」にも同じことが言えるのではないかと思います。

学び続けることで、知的栄養を摂取し、古くなった知の分子を分解し、
新たな分子に置き換え「更新」することで頭の中も「健康」な状態を
維持できるということです。

そう言えば、マネジメントの父であるドラッカ-も
「知識は急速に陳腐化する」と述べ、継続学習の必要性を訴えています。
知識社会の現代においては、どんどん知識のスタンダードが変化します。
知の栄養摂取の継続により知の体系を「更新」していかなければ、
「知の健康」は維持できないように思えますね。

このように「知の動的平衡」という概念でイメージすると、
学習を継続することの大切さを実感できるのではないでしょうか。

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