ワイングラス

生涯学習を続けると言っても、一体何を学べば良いのでしょうか。
大学入試、資格試験、昇進試験などは一定のカリキュラムや対象があります。

技を極めようとする職人さん、
生涯の研究テーマが見つかった研究者などであれば別ですが、
一般の方が生涯追究するテーマや学びの対象を見つけるのは
大変なのかも知れません。

そこで、サービス世界コンクールで優勝した
世界一のサービスマンとされる宮崎辰氏の話に耳を傾けてみましょう。(*1)

宮崎氏は、サービスマンとして一流になるためには、
ソムリエの資格は当然で、料理を切り分けて出すデクパージュの技術、
カクテルを作る技術、バリスタとしてコーヒーを淹れる能力が求められ、
フラワーアレンジメントの知識もあった方が良い、
フランス料理のお店にいるならフランス語を学び、
英語もできるべきだと言います。

また、コーヒーカップの置き方、ワインや水の注ぎ方、
料理の出し方一つ一つのマナーの背景には
その料理の食べ方や食文化から考えて合理的な理由があるのだそうです。
マナーを丸暗記的に覚えていても、使いこなすことはできず、
使いこなせなければ正しいサービスができない。
正しいサービスを行うためには、
所作の背景にある文化まで学ばねばならないということでしょう。

このことは、「良い仕事」を追究しようとすれば、
必然的に学ぶべきことが際限無く立ち現れることを
示唆しているのではないでしょうか。
つまり、職業人としてレベルの高い仕事をしようという姿勢を持てば、
必然的に学習を継続することになるということです。
何よりも自然な笑顔、心からのおもてなしのためには
人間性を磨くことも必要でしょう。

これは何もサービス業に限った話では無いように思えます。
結局、いかなる職業でも「良い仕事」をしようと考えることは
「より良く生きる」という哲学的な問題に行き着くことになるでしょう。
「学習を続ける」ということは
取りも直さず人間の生き方に関わる話なのです。(続く)

(*1)
宮崎辰『世界一のおもてなし』中経出版(2013年)

9つの誤解:間違いだらけの“子育て”