こんにちは。
今回も混合歯列期の矯正治療のお話です。
今回は受け口の改善のお話です。
Q.
「受け口はいつ頃から治せばいいのでしょうか?」
A.
早ければ早い方がいいです。
まずは、このグラフをご覧ください。
これは、子供の成長発育の年齢とスパート
(大きく成長する時期)を示したグラフです。
顎の発育に関しては、上顎は神経型と同じで、
下顎は一般型と同じ発育の仕方をします。
要するに、上顎は4〜5歳で8割方完成して10歳頃まで成長し、
下顎は0〜3歳と13〜20歳頃に2回一気に成長する時期が来ます。
そのため、前回の上顎前突(出っ歯)編では、
10歳までに治療しましょうという話になったのです。
逆に、下顎前突は後々まで長い時間をかけて成長をします。
そのため、早めに改善しておかないと、
後に顎切りの手術をしないと治らないところまで
下顎の成長が進んでしまうことも少なくありません。
下顎が前方へ成長する大きな原因のひとつとして遺伝があります。
お父さん、お母さんはもちろんのこと、
おじいちゃんやおばあちゃんが受け口でも遺伝することもあります。
また、親の上下の歯の被蓋
(ひがい:上下の前歯の噛み合わせの重なりのこと)が正常でも、
骨格的に三日月型の下顎前突(下顎が出ている状態)でも、
子供の下顎の成長が旺盛になることは十分ありえます。
有名なところでは、現在のスイス領内に発祥した
ドイツ系の貴族の家系であるハプスブルグ家がよく知られています。
興味があれば検索してみてください。
(編集部註:「ハプスブルグ家」で
Googleの画像検索をしてください。出ます。)
矯正治療とは、歯並びだけでなく、
正常な顎の成長発育を見守る治療でもあります。
矯正学は歯科学の中でも特殊な分野なので、
矯正治療の専門医としてのトレーニングを
積んでいる先生でも考え方が異なる場合があります。
結局、20歳まで成長するから
大人になってから治しましょうという先生もいます。
それをどう捉えるかは、患者さんの考え次第です。
賛同できればその患者さんにはとっては正しいでしょうし、
「早く治療を始めて簡単な治療ですむなら始めたい」
と考える方には向きませんね。
医療には正解はないので、
自分に合う治療をすすめてくれる先生との出会いも大切です。
下顎の成長は、遺伝の他にも環境がとても大きな因子でもあります。
いわゆる、上下の歯の角度が悪かったり、
口腔周囲筋(口の中や唇などの周囲の筋肉)
や舌の位置や癖などです。
そのような悪習癖(悪いくせ)さえなければ
下顎が過成長せずにすむかも知れません。
3歳児の受け口が生え変わりで自然治癒(勝手に治ること)
するのは6%ほどだという論文もあります。
受け口の歯並びのせいで、本来しない「顎を前に出す」
という行為で骨格的な前方への成長を促してしまうからです。
かつては、乳歯列期の子供に使ってもらえるような装置は
存在しなかったのですが、現代では3歳から受け口の被蓋を
改善できる簡単な矯正器具もあります。
歯に関して心配なことがあれば、
すぐにかかりつけの先生に納得いくまで相談してください。
そして、もしそれでも心配ならばセカンドオピニオン
(何名かの異なった先生の意見を聞くこと)をもらってください。
それらは、患者さんが持っている当然の権利なのですから。
私の考えとしては、歯並びや顎の成長発育に関しては、
一般歯科の先生や小児歯科の先生の他にも、
なるべく早い段階で矯正専門の先生にご相談することを
強くおすすめいたします。
目は眼科、鼻は耳鼻科、お腹なら内科、口腔腫瘍なら口腔外科、
成長発育関しては矯正歯科というように、餅は餅屋ということです。
それではみなさん、今日もよい食事を!
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