学生:勉強

もう20年以上も前、予備校で事務職員をしていたころのことです。

事務職員はチューター(クラス担任)も日常業務としており、
受験生の学習方法アドバイス、生活指導、進路指導など、
授業以外のサポートを行っていました。
当然、各科目の指導は講師が授業を通じて行い、
教科毎の学習方法などについても説明はしますが、
予習・復習の仕方のアドバイスなど細かな指導は
チューターの仕事でした。

ある時、クラスの生徒が相談に来ました。

生徒:「チューター、僕、英語がどうしてもダメなんです。」
私:「そうですか・・・。じゃあ、具体的に検討するため、
特に苦手と思っている教材を持ってきてよ。」
生徒:「わかりました。」

後日、その生徒が言われた通り、教材を持ってきました。

生徒:「チューター、この文章の意味が全然分からないんです・・・」

その生徒が持ってきたのは、
英語長文読解の「全訳(日本語)」でした。

私:「英語が苦手なんだよね?」
生徒:「はい、この全訳の文章の意味が全然分からないんです・・・」
私:「・・・」

既に、20年以上前にこのような場面に良く遭遇していた私は、
自分では「英語が苦手」だと思っている受験生の中に、
それ以前に日本語が苦手なので英語が理解できていないという者が
相当数いるだろうと感じていました。

「全ての学習の土台となるのが母語だ」
ということはよく言われますが、
受験の現場にいるとそのことを痛感します。
最近は、相談にきた受験生の使う「言葉」で
成績の善し悪しの判断がつくことがあります。
最初の2~3分のやり取りでどのレベルのアドバイスをするかが
決まってくるのです。
早い時期から英語を学習すべきだという意見も聞きますが、
「母語」をおろそかにしたままの外国語教育は
本末転倒になるだろう感じています。

私は「母語の強化と豊かな経験」
を自らの子育ての柱としていますが、
それは受験現場での指導経験などから気付いたものです。
子どもの頃からの対話や読書を通じた母語の力は本当に大切ですよ。

 

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