肉を食べる男

結論が年をまたいでしまいました。
本年もよろしくお願いします。

さて、待ちに待った(?)結論です。
これまでのお話では、残念ながら、
「教育」そのものと「草食系」との
直接の相関関係を示唆する決定的な事実が見つけられたとは
言い難いと思います。
しかし、「教育」の差を調べた結果、
昔と今では「若者を取り巻く環境が異なっている」ことを
再確認させられました。
そういう意味では「環境造りの一端を教育が担っている」
と考えることで、
「教育の変化が、草食系男子の増加の遠因であると十分考えられる」
と結論づけることはできるでしょう。

いずれにしても、やはり「社会」や「環境」が
様々な種類の男子を生み出していることには間違いないので、
教育それ自体が決定的な要因になっているとは考えにくいですが。

それでは、最後に「肉食系」が減り「草食系」が増えた理由
と思われる2つの大きな要因をまとめた上で、
このお話を締めくくりましょう。

(1)「価値観」が多様化し、
様々なスタイルの男子が受け入れられるようになった。

「ゆとり教育前」と「ゆとり教育」を比べると、
「ゆとり教育」では「競争」よりも「個性」を重視し、
積極的に尊重しています。
つまり、ゆとり教育以前は競争の勝者しか輝く場が与えられにくく、
それ以外の「個性」は失われてしまっていたと考えられます。
しかし、ゆとり教育では「個性の尊重」という形で
個人の様々なあり方が認められるようになりました。
これは、男子は自分のアイデンティティを確立するために
外的要因に頼る必要がなくなったことを意味しています。

「自分がありたいと思うように存在する」ことが
容易に認められるわけですから、
他人に対して何かを訴える必要も、
他者を通じて自分の立場を確認する必要も少なくなったと言えます。
その様な変化の中で、男性が女性に対し
積極的に働きかけなくなったのも頷けるのではないでしょうか。

(2)「通信手段」の発達により、
プライベートの露出が少なくなった。

先のコラムでも述べましたが、
昔は、学生が意中の女性にアプローチするためには、放課後
屋上に呼び出したり、下駄箱に手紙を入れたり、
実家に電話するしか方法がありませんでした。
要するに直接相手に伝えるか、実家の電話に連絡するしか
選択肢がないので、相手に「こっそり」と
思いを伝えることが著しく難しい環境にあったのです。
それに引き換え、現代では「通信手段」が大幅に多様化しました。携帯電話を使えば、誰にもバレずに
相手と連絡を取ることができますし、何と言っても
「メール」の存在は大きいでしょう。
面と向かって話すと緊張してしまい、
感情を伝えるのが苦手な人も「メール」であれば簡単です。
感情を表現するには、声の抑揚や表情の代わりに
「顔文字」や「スタンプ」といった強い味方がついていますし、
気の利いたセリフが思いつかない場合「コピペ」で済みます(笑)。

そう考えると、情報は「所有」ではなく
「利用」するものになったとしみじみ感じますね。
かつては、相手に訴えかける感情を表現する表情や声は、
「上手な人」の専売特許でした。
とっさに巧いセリフや引用を挟み込むのは、
日頃からそのような文章に触れる努力を続けた人に
与えられる特権でした。
それが今や、コミュニケーションの方法が変化したおかげで、
素人でも戦い易い土壌が出来上がったのです。
今では「情報」を「選択」して適切に出す能力が求められています。
自分で情報を正確に所有しなくても良くなったんですね。

おっと、話が少しそれてしまいました。話を戻しましょう。
このように通信手段の向上により、
目立たないところで女性へのアプローチが可能になったことで
「肉食」が発見されにくくなったことは事実です。
そういう意味では、しっかりと相手の顔を見て
正々堂々と自分の思いを伝えるほど、気持ちのこもった(飢えた?)
男性は減っているという件は納得がいくのではないでしょうか。

長い間、結論をお持たせしましたが、
今回のお話はこれでおしまいです。
それでは今年も素敵な一年をお過ごし下さい。

9つの誤解:間違いだらけの“子育て”