父子:夕日

実はRちゃんの母親にはもう一つの思いがあったそうです。
Rちゃんは人見知りをしない性格と書きましたが、
それどころか自ら進んで大人に声をかける子でした。
保育園、お店、病院などで大人と出会うと、
自分から「何やってるの~」と声をかけるのです。
どうも「本当に子ども好きの大人かどうか」を
「見定めて」いるようでした。
「子ども好きでない大人」と判断すると
サッサと話しかけを中止していたのです。

母親は、このRちゃんの「大人を判断する力」
を試そうと考えたのです。
一日中一緒にいれば、私の「子ども好き度」
を判断できると思ったのです。
打算の無い子どもは、
むしろ大人以上に人を見抜く力があるのかも知れませんね。

さて、仕事部屋の隣の部屋に布団を敷き、
身体を休めさせるとともに、時々テレビやビデオを見せながら、
また、ご飯やおやつを食べさせて一日過ごさせました。
夕方になっていよいよ母親が恋しくなったのか、
「マ~マ~」と泣き出した時には「まずい!」と思ったのですが、
その瞬間、「ピンポーン」と母親が帰ってきたので
無事お勤めを終了することができました。

この日の一件が私達夫婦の結婚を早めたことは間違いありません。
後年Rちゃんは
「おばあちゃんの家だと間違いなく
一日中寝ていなければならないから・・・」
と証言しましたが、仮にそれが事実だとしても、
神様か仏様かわかりませんが、5歳児をして、
そうするようしむけたのだと考えるようにしています。

親子の血のつながりにこだわる方もいらっしゃいますが、
親子も夫婦も様々な偶然が重なり、
奇跡のような確率で出会っているように思えます。
私はもはやそれは「縁」であると考えています。
Rちゃんとはおそらく「縁」があったのでしょう。
そう考え、Rちゃんや妻との出会いや関係を
大切にしてきたつもりです。

もっとも、その後、
「いいか、世間では親と上司は選べないというが、
Rちゃんは親を選んだのだからな」
と家族の中では笑い話のネタになりましたが(笑)

 

9つの誤解:間違いだらけの“子育て”